ルバイヤート 日本語訳 読み比べ|岩波文庫・トゥーサン版・朝日出版社版

ルバイヤート 日本語訳 読み比べ|岩波文庫・トゥーサン版・朝日出版社版

オフ 投稿者: せせら編集部

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『ルバイヤート』は、酒や恋をうたいながら、生の短さや運命への問いを繰り返すペルシアの四行詩集です。同じ作品名でも、日本語訳がたどった道筋によって読後感はかなり変わります。

訳文を読み比べるときは、言葉の古さや滑らかさに加え、何語を経由した訳かにも注目したいところ。原詩に近い構成を追うか、英詩として広まった姿を味わうかで、手に取る本は違ってきます。

今回取り上げる三冊は、ペルシア語原典からの訳・フランス語散文訳からの訳・フィッツジェラルドの英訳からの訳です。訳文の違いがどこから生まれるのか、収録内容とあわせて見ていきます。

書名訳者ページ数参考価格
トゥーサン版 ルバイヤートトゥーサン版 ルバイヤート高遠弘美2402,860円
ルバイヤート(岩波文庫)ルバイヤート(岩波文庫)小川亮作176627円
ルバイヤート(朝日出版社)ルバイヤート(朝日出版社)齋藤久2403,300円

トゥーサン版

高遠弘美訳の本書は、フランツ・トゥーサンによるフランス語散文訳を日本語に移した版です。国書刊行会は全170首の完訳と、挿絵を多数収録した内容を案内しています。四行形式をそのまま再現するより、仏訳がつくった文章の流れを読む一冊です。[国書刊行会の書誌情報](https://www.kokusho.co.jp/np/isbn/9784336075970/)

四行詩らしい韻律や行の切れ目を第一に期待すると、散文訳という形式に意外さを感じるかもしれません。一方で、比喩や思索をひとまとまりの文章として受け取りたい人には、詩の意味を追いやすい構成です。

生と死、運命、薔薇や盃をめぐる主題を幅広く読みたい人や、英訳とは別の西洋語訳を介した姿に関心がある人には、この本がおすすめです。参考価格は2,860円です。

本書の個性は、原詩に最も近いと単純に順位づけることでは測れません。ペルシア語から仏語散文へ移った詩が、高遠訳でどんな日本語の呼吸を得たか。その翻訳の重なり自体を味わう読み方が中心になります。

トゥーサン版 ルバイヤート
トゥーサン版 ルバイヤート

岩波文庫版

小川亮作訳の岩波文庫は、ペルシア語原典にもとづく訳です。東京大学附属図書館U-PARLの解説でも、小川訳は日本で広く読まれてきた原典訳として紹介されています。三冊の翻訳経路を考えるうえで、基準点にしやすい一冊ですね。[東京大学U-PARLの解説](https://u-parl.lib.u-tokyo.ac.jp/japanese/column55)

176ページの文庫です。作品の全体像に触れたい人にも手に取りやすい厚さでしょう。[書誌情報](https://www.books.or.jp/book-details/9784003278314)

詩の短さの中にある無常観や、瞬間を生きる感覚を簡潔な日本語で追いたい人には、この版がおすすめです。参考価格は627円。三冊の中で価格を抑えて試せるため、ルバイヤートを初めて読む人にも現実的です。

原典訳だからといって、作者の確定した全作品をそのまま読めるわけではありません。ハイヤーム作とされる四行詩には伝承や選定の問題があり、収録の違いもあります。訳の基準点として読みつつ、他版との詩の数や構成の差も意識してください。

ルバイヤート(岩波文庫)
ルバイヤート(岩波文庫)

朝日出版社版

朝日出版社版は、齋藤久訳によるフィッツジェラルド英訳からの翻訳です。フィッツジェラルドの初版は1859年刊で、朝日出版社版はその初版をもとにしています。ペルシア語の四行詩が、英語詩として再構成された姿を味わう本です。[国立国会図書館の書誌情報](https://ndlsearch.ndl.go.jp/books/R100000002-I000011226682?ar=4e1f)

本書は240ページの単行本です。翻訳された詩とその受容史をまとめて眺めたい人におすすめです。

フィッツジェラルド版は独自性の強い英訳として知られ、原詩の語句を一対一で移したものとは異なります。朝日出版社版はハイヤームの原典訳としてではなく、英語圏で広く親しまれたフィッツジェラルドのルバイヤートを日本語で読む本として楽しめます。

参考価格は3,300円です。フィッツジェラルドの翻訳にも関心がある人におすすめの一冊です。

ルバイヤート(朝日出版社)
ルバイヤート(朝日出版社)

詩形と読み味

ルバイヤートは四行詩を指す語で、もともとはペルシア語の詩形名の複数形です。翻訳では、四行の韻文を保つか、別の詩形へ移すか、散文として流すかで印象が変わります。詩形そのものも読み比べの対象です。[東京大学U-PARLの解説](https://u-parl.lib.u-tokyo.ac.jp/japanese/column55)

四行のまとまりを意識しながら読みたい場合は、各詩の簡潔さや結句の響きに注目するとよいでしょう。散文訳では一首の意味が文章の流れとしてつながり、思想や情景を追いやすく感じることがあります。

また、酒や盃の表現を文字どおりの享楽として読むか、人生や信仰をめぐる比喩として読むかでも受け止め方は変わります。訳文の一語だけで解釈を決めず、註や解説がある版では補助線として参照してください。

三冊を一度にそろえなくても、岩波文庫を読んでから、気になった詩の主題をトゥーサン版や朝日出版社版で確かめると違いが見えてきます。ただし詩の配列や採録が同じとは限らず、完全な対訳のように行単位で照合するものではありません。

結論

原典にもとづく日本語訳を入口にしたい人には、小川亮作訳の岩波文庫がおすすめです。価格が627円と手頃で、解説を通じてルバイヤートの基本的な主題に触れられます。

散文訳の流れを読みたい人には、高遠弘美訳のトゥーサン版がおすすめです。フィッツジェラルド英訳をもとにした日本語訳に関心がある人には、朝日出版社版をおすすめします。

読み比べで大切なのは、三冊をどれが正しい訳かという基準だけで並べないことです。原典・仏語散文訳・英語詩訳という経路の違いを知っておけば、それぞれのルバイヤートが見せる人生観や詩の響きを別々の魅力として受け取れます。

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