死に至る病とは?キェルケゴールの絶望と5つの版を紹介

死に至る病とは?キェルケゴールの絶望と5つの版を紹介

オフ 投稿者: せせら編集部

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「死に至る病」は、病気の治療法を説く本ではありません。デンマークの思想家キェルケゴールが、人間の絶望とは何かを掘り下げた哲学書です。

題名の強さにひかれて手に取っても、読み始めると絶望、自己、罪といった言葉が続きます。どの訳を買うかで迷うのも、自然なことですよね。

この本の中心にあるのは、絶望を単なる落ち込みではなく、自分自身との関係として考える視点です。内容の見どころと、読みたい深さに応じた版の違いを紹介します。

作品の核

作中の「死に至る病」とは、絶望を指します。題名にある病は身体の病気ではありません。自分自身をどう受け止めるかという精神の問題です。

キェルケゴールは、人間を自己として捉え、その自己が自分自身との関係を結ぶ存在だと考えます。つまり、自分でありながら、自分をどう引き受けるかに悩む存在なんですね。

欲しいものが手に入らない苦しさだけが、絶望ではありません。自分の弱さを見たくない、自分とは別の人間になりたい。反対に、誰にも頼らず自分だけで自分を作りたい。そうした姿勢も絶望として分析されます。

講談社は、本書の第一編で絶望のあり方を分析し、第二編で絶望が罪へ変わる問題を扱うと紹介しています。悩みの名前を並べる本というより、その根にある自己のあり方を問い直す一冊です。講談社の作品紹介

絶望のかたち

本書は、本人が絶望していると気づいていない状態も扱います。人生に大きな不満がなくても、自分自身と向き合わなければ、絶望は見えにくい形で続くと考えます。

自分であることを望まない絶望もあります。失敗や欠点を抱えた自分を受け入れられず、別の誰かになれたらと願う。けれど、その願いだけでは自己との関係はほどけません。

反対に、自分自身であろうとする意志が強くても、すべてを自分の力だけで決められると思い込めば、別の行き詰まりが生まれます。弱さを隠す人も、強さに閉じこもる人も、どちらも絶望の分析に含まれます。

ここでいう絶望を、いまの気分の落ち込みとそのまま同一視する必要はありません。キェルケゴールは宗教的な前提も含めて論じており、現代の心理学や医療の説明をする本とは目的が違います。

自己を考える

本書を読むと、「自分らしく生きればよい」という言葉も簡単には言えなくなります。自分の望みを通すだけで自己を引き受けたことになるのか、という問いが残るからです。

たとえば仕事で失敗したとき、「向いていないから別人になりたい」と感じることがあります。本書が差し出すのは、すぐに前向きになる方法ではありません。失敗した自分をどう見ているのかを問い直す視点です。

自分を責め続けることと、自分を見つめることは同じではありません。絶望の分析は、読者に自己嫌悪を勧めるものではなく、自分と自分の関係を認識するための思考として読めます。

文章は抽象的で、同じ概念が角度を変えて何度も登場します。物語のように先へ進む読み味ではありません。数ページ読んで考え込み、いったん閉じる読み方もできます。

宗教との距離

「死に至る病」は、自己や絶望を人間一般の問題として論じたあと、キリスト教の信仰に関わる議論へ進みます。後半では、絶望と罪、神の前で自己であることが大きな主題になります。

宗教的な言葉を避けて読みたい人は、後半で距離を感じるでしょう。一方で、信仰を前提とした思想が人間をどう捉えるのか知りたい人には、作品の中心に触れる部分です。

キリスト教の教義を手早く説明する入門書として買うと、期待とはずれるかもしれません。教義の整理よりも、信仰との関係を通して自己と絶望を問い直す議論が中心です。

本書は1849年に刊行された著作です。現代の自己啓発書のように、悩みを分類してすぐ実践できる手順を示すものではありません。答えを受け取るより、問いの立て方を味わう本ですね。

訳書と漫画の早見

版によって翻訳者や収録内容が異なります。原典の議論を読みたいか、漫画で大筋をつかみたいか。いっしょに収録された作品が必要かも、見ておきましょう。

書籍形態・内容参考価格
死に至る病(岩波文庫)死に至る病(岩波文庫)斎藤信治訳・304ページ1,001円
死に至る病(講談社学術文庫)死に至る病(講談社学術文庫)鈴木祐丞訳・282ページ1,265円
死にいたる病(ちくま学芸文庫)死にいたる病(ちくま学芸文庫)桝田啓三郎訳・430ページ1,540円
死にいたる病と現代の批判死にいたる病と現代の批判桝田啓三郎訳・2作品収録1,760円
死に至る病(まんがで読破)死に至る病(まんがで読破)漫画版・Kindle48円

価格はすべて2026年9月28日時点のAmazon参考価格で、時期によって変わります。岩波、講談社、漫画版はKindle版です。ちくま版は文庫、中公版は新書です。

講談社版は訳注を読みながら本文を追いたい人に、ちくま版は絶望と罪の分析をじっくり読みたい人におすすめです。作品の大枠を先につかみたい人には漫画版が向きます。

岩波文庫版

岩波文庫版は、キェルケゴールの著作を斎藤信治が訳した版です。304ページのKindle版で、電子書籍で読みたい人におすすめです。国立国会図書館の書誌情報

講談社版のように新訳や訳注を特徴として前面に出す版とは、成り立ちが異なります。従来の訳文で読み進めたい人や、岩波文庫のシリーズでそろえたい人におすすめです。

参考価格は1,001円です。漫画版を除く原典の電子版では、5冊の中で最も安価です。まず本文を通して読み、必要に応じて別の訳や解説へ進めます。

死に至る病(岩波文庫)
死に至る病(岩波文庫)

講談社学術文庫版

講談社版は、鈴木祐丞訳です。

282ページのKindle版です。今回の5冊ではページ数が最も少ないものの、それだけで文章の難しさは決まりません。自己や絶望の議論を読みたい人におすすめです。

参考価格は1,265円、定価の目安は1,540円です。実売価格は時期によって変わるため、購入時に電子書籍の価格と定価を分けて確認してください。

死に至る病(講談社学術文庫)
死に至る病(講談社学術文庫)

ちくま学芸文庫版

ちくま学芸文庫版は、桝田啓三郎訳です。絶望と罪の諸形態を論じています。筑摩書房の作品紹介

本書は二編構成です。前半で絶望の形を追い、後半で絶望と罪の関係を読む流れです。作品全体を腰を据えて読みたい人におすすめです。

430ページの文庫で、参考価格は1,540円です。紙の本を手元に置いて読み返したい人や、注を参照しながらゆっくり進みたい人に合います。

死にいたる病(ちくま学芸文庫)
死にいたる病(ちくま学芸文庫)

中公クラシックス版

中公クラシックス版は、桝田啓三郎訳の「死にいたる病」に「現代の批判」を加えた一冊です。中央公論新社の書誌情報

「現代の批判」は別の著作です。絶望論だけを読みたい場合は収録作品を確かめてください。キェルケゴールの思想と社会批判を続けて読みたい人には、二作品をまとめて読める点が魅力です。

392ページの新書で、参考価格は1,760円です。作品単体の分量と価格に加え、もう一篇を読む予定があるかで判断すると、購入後のずれを防げます。

死にいたる病と現代の批判
死にいたる病と現代の批判

まんが版

「まんがで読破」版は、哲学書の文章をいきなり読む前に、漫画で主題の輪郭に触れたい人におすすめです。

参考価格は48円のKindle版です。価格の低さは入口としてうれしい点ですが、原著の言葉や訳注を読み比べる目的なら、漫画版だけでは届きません。

哲学書を読むのが初めてで、題名の意味や大筋をつかんでから原典へ進みたい人には有力です。原典の議論そのものを知りたい人は、漫画版のあとに文庫版を一冊加えてください。

死に至る病(まんがで読破)
死に至る病(まんがで読破)

結論

原典を訳注とともに読みたいなら講談社版、詳しい注を読みながら紙でじっくり進めたいならちくま版がおすすめです。岩波版はKindleで従来の訳を読みたい人におすすめします。

「現代の批判」も続けて読みたい人には中公クラシックス版、物語として全体像に触れたい人にはまんが版がおすすめです。版の値段と、もう一篇や訳注まで読むかを合わせて考えると、購入後のずれを防げます。

どの版でも、中心にある問いは絶望とは何かにとどまりません。自分であることをどう引き受けるのか。答えを急がず、その問いと付き合いたい読者に長く残る一冊です。

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