
ゴドーを待ちながらとは?あらすじと訳書2冊を紹介
『ゴドーを待ちながら』は、何か大事件が起きて解決する物語ではありません。二人の男が、いつ来るとも分からないゴドーを待ち続ける。その時間をどう読むかで、笑いにも人生の話にも見えてくる戯曲です。
戯曲が初めてだと、筋が進まないことに戸惑うかもしれません。けれど、会話のずれや同じ場所へ戻る感覚こそ、この作品の読みどころです。訳の違いも含めて、二冊の特徴を紹介します。
| 書名 | 訳者 | 収録内容 | 本の特徴 | 参考価格 |
|---|---|---|---|---|
ゴドーを待ちながら(白水Uブックス) | 安堂信也・高橋康也 | ゴドーを待ちながら | 作品を一冊で読める新書 | 1,320円(2026年9月28日時点のAmazon価格。時期で変動) |
新訳ベケット戯曲全集1 ゴドーを待ちながら/エンドゲーム | 岡室美奈子 | ゴドーを待ちながら、エンドゲーム | 2作品を収めた単行本 |
作品のあらすじ
舞台は田舎道。一本の木のそばで、エストラゴンとヴラジーミルがゴドーを待っています。二人は知人のようでもあり、長く一緒に過ごしてきた相棒のようでもありますが、待ち合わせの理由やゴドーの正体ははっきりしません。
二人は靴を脱いだり、食べ物を気にしたり、話題を変えたりしながら時間をつぶします。そこへポッツォとラッキーが現れ、さらに少年が伝言を運んできます。出来事はあるのに、待つ状況そのものは動かない。このちぐはぐさが物語を支えます。
第一幕と第二幕はよく似た一日を描きます。第二幕では木に葉が見られ、ポッツォとラッキーにも変化が起きていますが、二人の待ち時間はまた続く。小さな違いに気づくと、ただ同じ場面を繰り返す劇ではないと分かってきます。
待つ時間の重み
ゴドーは誰なのか。読み始めると気になる問いです。救いをもたらす人物、約束の相手、あるいは来ると信じている何か。いくつもの解釈はできますが、作品は答えを一つに固定しません。正解探しを急がなくて大丈夫です。
むしろ目を向けたいのは、来ない相手を待ちながら、二人がその場を離れられないことです。帰ろうと言いながら動かず、明日こそ来るかもしれないと考える。期待と諦めが隣り合う様子に、身近な約束や先延ばしを重ねる読者もいるでしょう。
目的が果たされなくても、会話を続けて一日をやり過ごしている。その関係に注目すると、筋の少なさが物足りなさだけではなくなります。
会話にひそむ笑い
作品を難解で暗いと決めてしまうのは早いかもしれません。靴や帽子をめぐるやりとり、言葉の取り違え、同じ話題への戻り方には、舞台の喜劇らしい間合いがあります。深刻な問いのすぐ隣に、妙に可笑しい動きが置かれているんです。
二人は困っているのに、ふとした仕草や言葉の応酬で観客を笑わせる。その直後に、笑ってよかったのかと感じることもあります。可笑しさと心細さが離れないところが、この戯曲ならではの言葉と動きです。
上演を想像しながら読むと、台詞の長さや沈黙にも意識が向きます。台詞に役者の声や動きが加わると、意味が立ち上がる形式です。会話がつかみにくい時は、誰が何をしたか、どの言葉に反応したかを追うと場面が見えやすくなります。
安堂・高橋訳
『ゴドーを待ちながら(白水Uブックス)』は、安堂信也・高橋康也訳で作品全体を読める一冊です。新書判なので、ベケットの戯曲にまず触れてみたい人や、鞄に入れて読み進めたい人におすすめです。参考価格は1,320円ですが、Amazonの価格は時期によって変わります。
この訳では、二人のやりとりを一作の中で追えます。ゴドーをめぐる謎に加えて、靴や食べ物の話、相手を引き留める言葉も場面の流れの中で確かめられます。戯曲の構造をつかみたい人は、こちらから読むとよいでしょう。
白水社の紹介では、初期の日本での受容には実存主義的な読みが強かったと岡室美奈子が振り返っています。また、安堂・高橋訳は美しい一方で抽象的に感じられることもあるとのことです。この指摘は訳の優劣を決めるものではありません。読む人が言葉のどんな違いに注目するかを考える材料です。白水社の特集も参照できます。

岡室美奈子訳
『新訳ベケット戯曲全集1』は、岡室美奈子訳の『ゴドーを待ちながら』に加えて、『エンドゲーム』も収録します。一冊で二作品を読みたい人や、ベケットの別の戯曲まで続けて読みたい人におすすめです。302ページの単行本です。
白水社の特集によると、岡室はベケットの台詞を抽象的で難しいものと見るより、身体感覚に根ざした情感豊かな言葉と捉え、笑いの要素にも触れています。台詞の生っぽさや、舞台上で人が動く感覚を意識して読みたい人には、この新訳が合います。
本書には二作が収録されています。『エンドゲーム』も読むつもりなら、二つの戯曲をまとめて手元に置ける点が購入判断の材料になります。書誌情報で収録内容を確認できます。

結論
まず一作を読み、ゴドーを待つ二人の会話を自分なりに味わいたいなら、安堂信也・高橋康也訳の白水Uブックスがおすすめです。1,320円を目安にできますが、価格は購入時に確認してください。
台詞の身体感覚に関心がある人や、『エンドゲーム』も続けて読みたい人には、岡室美奈子訳の新訳全集1が合います。二作品を一冊で読めることを重視する人は、こちらを選ぶとよいでしょう。
どちらを選んでも、ゴドーの正体を一つに決めてから読む必要はありません。待ち続ける二人の会話を追い、笑ったり立ち止まったりすること自体が、この戯曲への入り口です。
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