
HACCP用温度計の選び方|食品中心温度・冷蔵庫内温度の違い
お店を開く準備やHACCPの記録を始める時、「中心温度計」「冷蔵庫用」「HACCP対応」と名前がいくつも出てくると、どれが必要なのか判断しにくくなります。
食品の加熱を確かめる温度計と、冷蔵庫・冷凍庫の温度を記録する温度計は、測る場所も役割も別です。店で測るものに合わせて、中心温度用と庫内用を別々に用意しましょう。
手引書に載っている温度は、どの店にもそのまま当てはまる一律の法定基準とは限りません。温度計を買う前に、業種別の手引書と自店の衛生管理計画を確かめましょう。
目次
HACCP用温度計は3種類を同じ物として選ばない
「HACCP対応」と書かれた温度計でも、食品内部、庫内の空気、食品や物体の表面を1台で同じように測れるわけではありません。まず、店で記録する温度が食品内部、庫内の空気、表面のどれかを確かめましょう。
| 種類 | 測る対象 | この温度計では代用しない測定 |
|---|---|---|
| 中心温度計(プローブ式) | 食品内部 | 冷蔵庫・冷凍庫内の空気温度 |
| 庫内温度計 | 冷蔵庫・冷凍庫内の空気 | 食品の中心温度 |
| 赤外線表面温度計 | 食品や物体の表面 | 食品の中心温度、庫内空気の記録 |
すべての店に3種類が必須という話ではありません。自店の調理工程と設備から、必要な種類を分けましょう。加熱や冷却を管理する店には中心温度用、冷蔵・冷凍設備を使う店には庫内用が必要です。赤外線式は表面温度用なので、食品の中心温度や庫内の空気温度の測定に代用しないでください。
食品の中心温度はプローブ式温度計で確認する
中心温度計は、食品の厚い部分の中心へプローブを差し込み、内部の温度を確かめるための道具です。赤外線温度計は表面温度用なので、食品内部の測定に代用しないでください。
使う場面は加熱直後だけではありません。再加熱や、加熱した食品を冷ます工程でも、店の衛生管理計画に沿った中心温度の確認が必要です。測定する食品とタイミングは、扱う食品と調理工程に沿って決めましょう。
冷蔵庫と冷凍庫は庫内温度計で確認する
庫内温度計は、冷蔵庫や冷凍庫の中に置き、設備内の空気温度を継続して確認するための道具です。庫内温度だけで、食品一つひとつの中心温度まで確認したと判断しないでください。
設置場所が扉の近く、冷気の吹出口、特定の食品のすぐそばだけに偏ると、その周辺の影響を強く受けます。冷蔵庫・冷凍庫の取扱説明書にあるメーカー指定位置へ置き、同じ位置の数値を継続して記録してください。
温度の例をそのまま全店舗の基準にしない
測る対象を分けたら、自店で使う温度を業種別手引書と衛生管理計画に沿って決めましょう。小規模な一般飲食店向け手引書には、冷蔵庫10℃以下、冷凍庫−15℃以下、食肉に付着する多くの微生物は中心75℃で1分以上、加熱後の冷却は2時間以内に20℃以下といった例があります。ただし、これらをあらゆる店舗に共通する万能な法定値として扱わないでください。
扱う食品、調理方法、保存や冷却の工程が変われば、管理する温度や確認のタイミングも変わります。手引書の数字だけを抜き出して、自店へ一律に当てはめないでください。
温度と測定のタイミングは、自店が採用した業種別手引書と、それをもとに作った衛生管理計画に沿って決める必要があります。自治体の案内や管轄保健所の指導も確認し、迷う場合は保健所へ相談してください。
また、冷蔵庫10℃以下は庫内の空気温度、中心75℃で1分以上は食品内部の加熱条件の例です。庫内温度計の表示で食品の中心温度を確かめたことにはならないので、中心温度はプローブ式温度計で分けて測りましょう。
中心温度計は精度・応答速度・防水を確認する
自店の管理温度が決まったら、メーカーが示す測定精度と照らし合わせ、許容誤差を含めても記録を判定できる中心温度計が必要です。応答速度は、testo 106のt99約10秒とAD-5604Cの90%応答約26秒のように到達率や測定条件が違うため、数字の小さい方を単純に速いと決めないでください。
日常の加熱確認に使うなら、0〜100℃で精度±1℃のTANITA TT-508Nがおすすめです。液体は表示が安定するまで約30秒が目安で、直径4×長さ110mmの一体型プローブです。IPX7でも、40℃以上の湯や蒸気、食洗機、長時間の浸水は避けてください。

測定回数が多く、食品へ差し込む跡を小さくしたい店にはtesto 106がおすすめです。精度は−30〜99.9℃で±0.5℃、応答速度は動いている液体でt99約10秒、プローブは長さ55mmで先端が細い形です。IP67になるのは別売のTopSafeを装着した時なので、販売ページで付属の有無を確かめましょう。

深い容器を測る場合や、表示部を食品から離したい場合はA&D AD-5604Cがおすすめです。直径3.6×長さ150mmのプローブと約1mのケーブルがあり、精度は−30〜250℃で±1℃、90%応答は約26秒です。温度プローブ接続時にIPX7相当となる条件を確かめたうえで、簡単な水洗いをしてください。測定値は最大99個まで保存できます。

| 製品 | 精度の代表範囲 | 応答速度 | 防水・保護構造 | プローブ形状 | 清掃時の注意 |
|---|---|---|---|---|---|
| TANITA TT-508N | ±1℃(0〜100℃)、±2℃(その他) | 液体で安定まで約30秒。条件により変動 | IPX7 | 一体型、直径4×長さ110mm | 丸洗い可。40℃以上の湯・蒸気・食洗機・長時間浸水は不可 |
| testo 106 | ±0.5℃(−30〜99.9℃。その他は温度帯別) | t99約10秒(動いている液体) | TopSafe装着時のみIP67 | 一体型、長さ55mm、軸径3mm・先端径2.3mm | 本体単体をIP67として扱わず、TopSafeの装着条件に従う |
| A&D AD-5604C | ±1℃(−30〜250℃)、±2℃(その他) | 約13秒(63.2%)、約26秒(90%) | プローブ接続時にIPX7相当 | ケーブル式、直径3.6×長さ150mm、ケーブル約1m | プローブを接続した状態で簡単な水洗いが可能 |
庫内温度計は最高・最低表示と記録方法で決める
庫内温度計は、自店の日々の記録方法に合わせて選びましょう。設置位置はメーカー指定の同じ場所から動かさず、現在温度だけで足りるか、最高・最低値も必要かを衛生管理計画に沿って判断してください。
シンワ測定73042は、現在・最高・最低温度を同時に1℃単位で表示するデジタル式です。3mの隔測センサーを庫内へ入れ、本体はスタンド、マグネット、フック穴で庫外に設置できます。警報や測定履歴の自動保存はなく、最高・最低値は温度変動を見るための表示なので、必要な数値は日誌へ転記しましょう。

CRECER AP-61は、−30〜30℃を1℃目盛で読む電池不要のアナログ式です。付属の吸盤で庫内の壁面に取り付けられ、文字盤には冷蔵・冷凍・野菜室の適温ラインがありますが、表示は現在温度のみで、最高・最低表示、警報、自動記録はありません。

確認していない時間帯の最高・最低温度も残したい店はシンワ測定73042、電池を使わず現在温度を目視する店はCRECER AP-61を選びましょう。ただし、最高・最低表示はHACCPの日誌を自動で作る機能ではありません。自店の衛生管理計画で決めたタイミングで数値を記録し、食品の中心温度は別のプローブ式温度計で測りましょう。
プローブは測定前後に洗浄・消毒する
食品へ直接触れるプローブには、測定前後の洗浄・消毒が必要です。消毒剤を含ませた布で一度拭くだけでは食品のかすや油まで取り除けないため、汚れが残っていれば先に洗い落としてください。
特に、生の肉や魚を測った後、そのまま加熱済み食品へ差し込む使い方は避けましょう。別の食品へ移る時も、自店で定めた洗浄・消毒を行うと、プローブを介した交差汚染のリスクを減らせます。
使える消毒方法や薬剤は温度計ごとに違い、濃度や接触時間にも条件があります。製品の取扱説明書と自店の衛生管理手順に従い、防水等級があるだけで電装部まで丸洗い、煮沸、食洗機洗浄ができるとは判断しないでください。
洗浄・消毒後は水分を拭き取り、十分に乾かしてから、清潔で水や食品が飛び散らない場所へ保管してください。保護キャップを使う場合も、プローブとキャップの内側が清潔で乾いた状態になっていることを確かめましょう。
氷水と沸騰蒸気で温度計を点検する
洗浄・消毒に加え、中心温度計は表示ずれの定期点検も必要です。店内での簡易確認には、氷水の0℃付近と沸騰蒸気の100℃付近を使えますが、メーカーによる校正や校正証明書とは異なります。
低温側では、氷を多めに入れた容器へ少量の水を加えてよく混ぜ、温度が落ち着いてからプローブを差し込んでください。センサー部分を氷水へ入れ、容器の側面や底へ当てずに、表示が0℃付近で安定するか確かめましょう。
高温側では、鍋の水を沸騰させ、取扱説明書に従ってプローブを蒸気へ当て、100℃付近を示すか確かめましょう。プローブを鍋底へ当てず、顔や手を上がってくる蒸気から離し、やけどに注意してください。沸点は標高や気圧で変わるため、必ず100℃になるとは限りません。
月1回の点検や年1回のメーカー校正は運用例であり、すべての店に共通する一律の義務ではありません。自店の衛生管理計画、扱う食品のリスク、メーカー推奨に合わせて頻度を決め、点検日、方法、表示値、判定を記録しましょう。誤差が製品や自店の許容範囲を外れた時は使用を止め、メーカーの手順に沿って校正、修理、交換のどれが必要かを判断してください。
中心温度用と庫内用を必要数そろえる
調理工程と設備ごとに必要な台数を決めましょう。食品の加熱や冷却を管理する店にはプローブ式の中心温度計、冷蔵庫や冷凍庫を使う店には庫内温度計が必要です。測る対象が違うため、中心温度計と庫内温度計を1台で代用しないでください。
必要数は、調理工程の数、冷蔵・冷凍設備の台数、ピーク時に同時測定する回数に応じて決めましょう。洗浄・消毒中も別の食品を測る店や、故障時に温度確認が止まると困る店では、予備機まで含めれば測定を続けられますが、すべての店に同じ台数が必要なわけではありません。
中心温度計は、日常の確認ならTT-508N、短時間に何度も測るならtesto 106、長いプローブや測定値の保存が必要ならAD-5604Cがおすすめです。庫内用は、庫外で現在・最高・最低温度を読みたいならシンワ測定73042、電池を使わず現在温度を目視するならCRECER AP-61から選んでください。
購入した温度計は、用途、設置場所、測定する工程、記録するタイミング、予備機の扱いを自店の衛生管理計画へ反映しましょう。測定結果の記録、使用後の洗浄・消毒、表示の定期点検まで衛生管理計画に沿って続けてください。
衛生管理計画で決めた温度から外れた時はどうしますか?
測定した担当者は、実測値、時刻、対象食品、行った処置を記録してください。提供できるかは、店長など衛生管理計画で責任者に定めた人が、あらかじめ決めた方法に沿って判断します。小規模な一般飲食店向け手引書には、中心温度が計画値に届かなかったため加熱時間を延長し、原因と指導内容も特記事項へ残す記載例があります。処置を決めていない場合は提供を保留し、管轄保健所へ相談してください。
温度記録はどのくらい保管しますか?
小規模な一般飲食店向け手引書では、一連の記録を1年間程度保管するよう示しています。店の責任者は、確認者のサインを含む記録を、食品衛生監視員から提示を求められた時に出せる状態で管理してください。業種別手引書や自治体の指導で別の期間が示される場合はそれに従い、分からなければ管轄保健所へ確認してください。
メニューや加熱・冷却工程を変えた時も同じ記録表を使えますか?
メニュー、原材料、納入業者、設備・器具が変わった場合は、店の責任者が衛生管理計画を見直します。新しい工程で測る対象、タイミング、管理温度、問題時の処置が変わるなら、記録表も更新し、見直した日付と確認者のサインを残してください。温度計の測定範囲や使用条件はメーカーへ、管理温度や処置の決め方は業種別手引書と管轄保健所へ確認しましょう。
温度記録は紙ではなくスマホやタブレットでも残せますか?
厚生労働省は、衛生管理計画と実施記録を入力できる一般飲食店向けアプリを公開しています。店の責任者は、日々の記録を確認し、保健所から提示を求められた時に出せる方法を選んでください。アプリの操作や仕様は案内ページのヘルプデスクへ、記録方法が自店の運用に合うかは管轄保健所へ確認しましょう。
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